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190506_直江津方面修学旅行から髙田・直江津周辺地図
直江津方面地図
(旅行案内から)
平成29年8月に亡くなった伯父の遺品を整理していたところ、鍋屋田国民學校(鍋屋田小学校)に通っていた頃に行われた遠足のしおりが見つかりました。それによれば、尋常科5年生の昭和16年(1941)6月は一泊二日で長野市戸隠に、尋常科6年生の昭和17年(1942)は直江津方面へ修學旅行、高等科1年生の昭和18年(1943)7月には万座温泉・草津白根山へ「鍛錬遠足」にでかけていたようでした。
謄写版(がり版刷り)印刷ではあるものの、当時の先生方のとても几帳面な文字にはそれだけでも驚かされるのですが、更に驚かされるのはその内容で、当時としては普通でも、今ではびっくりするような行程での遠足が行われていたことでした。
今回、こうした資料が我が家で埋もれてしまうのもどうかと思い、3回に分けて、当時の子供たちの遠足の様子を紹介してみたいと思います。2回目は尋常科第6学年生時に出かけたという新潟県直江津周辺を歩いた修學旅行。変換できない漢字も多々ありますので、それについては現在の文字で表記してありますのでご了承ください。

「戦前の遠足」その弐~鍋屋田国民學校尋常科
昭和十七年度 直江津方面修學旅行案内
日程 
十月二十三日 金
七時半学校集合-八時三十六分長野駅發乗車-十時三十七分春日山駅着下車-十二時春日山城阯着晝食-春日山神社-林泉寺-小丸山別院-五智國分寺-十六時わくら樓着宿泊
※注:「わくら樓」は新潟県上越市にあった割烹旅館で、現在は介護老人福祉施設和久楽になっているようです。
十月二十四日 土
八時旅館出發-水族館-直江津町-十三時十六分直江津駅發乗車-十五時十五分長野駅着下車-開散

長野
汽笛一聲 汽車は市内をぬけ稻田の中を走る。放送局のアンテナが二本目立って見える。

吉田
若槻陸軍療養所はこゝで下車して行く。駅の傍に北信一帯に配電する長野電氣株式會社の本社がある。この附近から豊野辺にかけて林檎畑が散在する。長沼村は特にその産地として知られている。

豊野
飯山鉄道の起点 この鉄道は 飯山・新潟縣十日町を経て 上越線に連絡する。正受庵・平隠温泉・志賀高原・野沢温泉がこの沿線にある。豊野は林檎の集散地であり 出荷の林檎が 駅の構内に積まれている。豊野駅を出た汽車はしばらく飯山線と並行して進むが やがて大きく左に廻り 鳥居川に沿って山間を上って行く。急な傾斜で鳥居川に迫る山々は美しく紅葉して 川のほとりの僅かの空地に苦勞して作られた段々の稲田をつつんでゐる。

牟礼
山間の小駅である。沿線には針葉樹林が目立ってくる。やがて鳥居川は右から左へうつり トンネルを二つくぐると古間駅となる。

古間
この辺一帯は鎌の産地で知られてゐる。汽車は 飯綱・黒姫の山麓の高原をすゝむ。晴天の時は この兩山が大きく裾をひいて左窓に見える。向って左が飯綱 右が黒姫である。既に右側にうつった鳥居川は川幅も狭くなり この駅を出てしばらくすると再び左へうつるが 汽車はこゝでこの川とお別れする。鳥居川の上流は 戸隠牧場を流れる御手洗(みたらし)川であり 下流は千曲川へ入る。

柏原
四年生の時來た所であり。一茶の生地であり 近くに野尻湖がある。汽車は黒姫山麓をすゝむ。附近の陰田は刈取がすみ 林の中には白樺の幹が見える。山峡に入ると同時に下りになり 矢の様な速さで雪除トンネルをくぐると 右側に發電所がある。これは野尻湖の水を落として發電してゐるものである。左側にも發電所があるが、この水源は関川である。山峡を出ると左にその関川がある。この川は鳥居川とは逆の方向に流れてゐることに氣づく。関川を渡ると 新潟縣となり やがて田口駅に着く。関川と鳥居川との分水嶺は柏原駅附近であることがわかる。

田口
駅の傍に信越窒素株式會社の大きな工場がある。駅の北西には赤倉温泉・池ノ平温泉がある。その附近はスキー場として名高い。積雪量は 三、四米ほどである。駅を出てしばらくすると 左側に小さな瀧がある。汽車は関川の深い谷を右手に見下して頚城平野に向って走り下る。途中二つの雪除トンネルがあり 之を出ると 右側に發電所がある。これは柏原駅を出て間もなく右に見えた發電所の水を再びこゝで落して發電してゐるものである。関山駅近くになると漸く視野が開ける。関川の下流は荒川といはれ直江津の海にはいる。

関山
駅のはるか南西に関温泉・燕温泉がある。汽車はこの駅で停車した後雪除トンネルの中を逆行して再び進路をとる。(この仕掛は勾配の急な所にある駅に設けられるものでスイッチバックといはれる。) 左は一帯の防雪林である。雪が多いことは この辺の家の造りによってもわかる。汽車の左窓からは遠く裾をひく妙高山の雄姿を見ることが出來る。妙高は 飯綱・戸隠・黒姫等 富士火山脈北端の火山群の主峯で 髙さは二四四六米であり 二重式火山である、徐行して雪除トンネルに入ると二本木駅である。

二本木
駅の傍に日本曹達株式會社二本木工場がある。最近は仕事が大きくなり寄宿舎がいくつも新しく造られて並んでゐる。やがて新井に近づくにしたがって 右方に頚城平野が開けてくる。

新井
駅を出ると左に大きな工場がある。汽車は廣々とした稲田の中をすゝむ。刈取られた□(※不明)に 田の畔に立ってゐる榛(はん)の木に棒を渡し そこにかけて干されてある。以前はこの辺でとれた米は越後米といはれて信州にはいってきた。荒川の支流の鉄橋を渡ると脇野田駅になる。

脇野田
見渡すかぎり稻田が續き 林にかこまれた民家がそここゝに見える。汽車が高田のまちにはいる手前左側に練兵場がある。

髙田
髙田市は人口三万 荒川の岸にあって頚城平野の中心をなし 米の集散地である。「雪の髙田」といはれる程雪の深い所で 道路をうづめる大雪は屋根の髙さにとどき 晝も室内は電燈をつけなければならないし 通りをはさんだ向かひの家とはトンネルをつくって徃來する。市の西方の金谷山は 今から約三十年前我が國で初めてスキーが行はれたところである。駅の東方一粁の所に髙田城趾がある。市内には東部第六十七部隊・第六十五部隊・師範学校・中学校・女学校がある。

春日山
稻田の中にある小さな駅である。往きにはこゝで下車する。

直江津

春日山城趾・春日山神社・林泉寺
曲りくねった山道を上って峯近くなると 松の梢越しに海が見える。城趾は南西に山を廻らし、北は日本海に面し、南東は附近一帯の平野を見下すことが出来る要害の地で 上杉謙信が居城とした所である。頂上は當時の本丸である。春日山神社には謙信を祀ってある。林泉寺は長尾氏の菩提寺である。此處は 謙信 幼時の學修所であり 又謙信の墓や川中島戦死者供養塔もこゝにある。謙信がかいた「春日山」「第一義」の額や 自畫像・川中島の戰で信玄に斬りつけた小豆長光の刀が寺宝となってゐる。

小丸山別院
親鸞上人が五年程居られた所で土地の人々を教へ導いた。親鸞□□(※不明)を改めたのは その頃といはれてゐる。

五智國分寺
聖武天皇の御代につくられたものであるが 今の建物は三百年程前に再建されたものである。紅葉し初めた杜の中に五智如來を安置した本堂や三重の塔が仰がれる。

水族館
國分寺のすぐ傍にある。規模は大きいものではないが 珍しい魚が美しい光を放って泳いでゐる。魚の種類は季節によってもちがふが 現在は なみあら・ぼうじゃうざめ・いそふぐ・とらふぐ・さばふぐ・こだひ・しまだひ・こち・うまづらはぎ・せんだひ・ぶり・まだひ・あかえび・すずき・くろだひ・はも・あわもちせいかい・わたりがに・おこぜ・きす・べな・さざゑ・等を見ることが出來る。

五智附近の海岸(名古の浦)
國分寺から松並木を通って宿泊旅館わくら樓に着く。こゝは切立った様な崖の上に立つ旅館で崖下には海水が迫っている。こゝに立って海を見ると 左方には崖がつづき 右方はなだらかな砂山が直江津まで續いてゐる。左方のものは段丘といって 海水に浸蝕されて出來たものであり 右方のものは風の作用で出來たものである。砂丘には幹の黒い磯馴(そなれ)松が植ゑられているが 不思議に皆海とは反対の方向に傾いてゐる。
波の静かな日であれば 波打ぎは行って波とたはむれたり 海水をなめてみたりするのも面白い。波のため永い年月すりへらされ角のない滑らかな小石に混って貝殻があり 又 あをさ・もづく・ほんだはら等の海藻が波に打ち上げられてゐることもある。この辺の海ではたひ・いか・いわし・さば等がとれる。なぎの日には 漁船を見つけることも出來るし 又 暗い会場に点々と漁火をみることも出來る。この海では潮の満干はそれ程多くない。海岸には鷗がゆるやかに飛んでゐる。夕方になると 水平線の彼方に 赤い大きい日が沈む。

佐渡ヶ島
直江津から三十八浬離れて居り 汽船で約四時間かゝる。島は東西五一粁 南北一0二粁 周囲凡そ二一一粁 面積八九〇平方粁 人口十一万 新潟縣に属してゐる。天氣の様子によって 遠く之を海上に臨むことが出來る。昔は しまながしの土地となってゐで 順徳上皇をはじめ奉り 日蓮上人 日野資朝等多くの悲話がある。

直江津町
人口約一万四千 荒川の河口にある港町 信越線と北陸線との連絡するところである。港は設備が乏しく良港とはいへないが 沿岸を通る船には大切な港である。北海道方面から 石炭・海産物を積んだ船がこの港に入って陸揚される。佐渡の小木港との間には定期船の便がある。

注意
一、出發の前
○持物 支度等は前日に用意し持物には氏名をかいておくこと。 ○出發の朝になって急に行かれなくなった場合は 必ず七時半までに知らせること。
一、持物・服装
○雨具・水筒・旅行案内・鉛筆・着更・手拭・はな紙・歯ブラシ・櫛(女子)・弁當(翌日の分も少し 之は代用食でもよい) 林檎ニケ 菓子又は飴少量 ○服装は質素で身輕なもの 履物はズック又はわらじ 脚袢(あるものだけ)
一、汽車
○乗り降りは 必ず汽車が止まってからにし あわてずに先生の指図にしたがふこと ○窓から顔や手を出さないこと ○汽車に酔ひさうになったら先生に知らせること ○車中で座席を離れて歩いたり 勝手に物を食ひ散らしたり 騒いだりしないで 窓からよく見学すること ○デッキには出ないこと ○降りるときには一停車場前位で用意し 忘れ物のない様にすること
一、見學
○先生の指図にしたがって規律正しくし 自分勝手のことをしないこと ○休んだ所では紙屑や食残り等を散らさないこと ○殊に水族館では水槽のガラスや壁にさわらないこと
一、宿泊
○はき物をそろへてよく始末すること ○自分の持ち物は一しょにまとめておくこと ○食事はしづかにし 不作法なことのない様にすること ○さわがずによく眠ること ○便所をよごさぬこと 又出發前に用便しておくこと ○夜は外に出ないこと ○先生の指図で行く以外は海岸に行かないこと ○宿の庭と海岸との間は 崖になってゐるから 充分に氣をつけること ○各班はいつもまとまった行動をとること


 「戦前の遠足」その参~鍋屋田国民學校高等科
  http://wingclub.blog.shinobi.jp/Entry/3125/
 「戦前の遠足」その弐~鍋屋田国民學校尋常科
  http://wingclub.blog.shinobi.jp/Entry/3124/
 「戦前の遠足」その壱~鍋屋田国民學校尋常科
  http://wingclub.blog.shinobi.jp/Entry/3123/


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